バリアフリーのリフォームは早い段階で準備して進めるほど、さまざまなリスクを下げられます。
年齢とともに筋力や感覚の衰えは気付かないうちに進行し、自覚したときには事故を心配するレベルになっていることが多いものです。
この記事では、日常の事故を予防し、介護が必要になっても家族全員が安心、快適に暮らせるバリアフリー化の内容や、リフォームの進め方を解説します。
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バリアフリーのリフォームをおこなうのはいつがいいか
バリアフリーのリフォームをおこなうタイミングは、身体の衰えなどの兆候が出る前から準備をするのが望ましいです。
人によっては50代から転倒リスクなど身体の変化が現れる場合があり、リスクヘッジとして、早めのリフォームを検討し始めるのがおすすめです。
例えば以下のようなことをきっかけに検討するのが良いでしょう。
子育てが終わったとき
子育てが終わり、子どもが自立することで、今まであまり考えてこなかった夫婦の暮らしを考える余裕が生まれます。
年齢的にも50代に差し掛かり、心身の変化も意識しやすくなっているでしょう。
また、子どもが独立することで、住まいの機能も変更しやすくなっています。
ご家庭の収入も安定してくる時期でもあり、子どもたちの独立のタイミングは、リフォームを考え始めるチャンスです。
住む方の年齢が50代になったとき
50代になると、身体の固さや膝の痛み、足腰が弱くなるなどの症状が出始め、実際に転落・転倒のリスクが高くなります。
現在の体調や、住まいの造作の状況に合わせて、以下6項目をチェックしてみましょう。
- 段差のつまずきの経験
- 階段の上り下りで感じる辛さ
- 浴槽の床で転んだ経験はあるか
- 部屋の出入り口の間口が狭くないか
- 手すりの必要は感じるか
- 介護の可能性のある疾患やケガ
まだそんな状況ではないと思うことも多いでしょうが、30歳前後の頃を思い出して、身体の動きを比較してみるのも、一つの方法です。
運動などで機能回復をはかることも大切ですが、身体の変化は80歳になったときのことを想定する機会でもあります。
ほかの修繕が必要になったとき
住宅リフォーム推進協議会の住宅リフォーム契約者実態調査によると、リフォーム全般のきっかけとなるのは、家屋や設備の老朽化が40%前後で、リフォーム検討の時点でバリアフリー化が占める比率は14%前後です。
バリアフリーを要する年代の方の住まいは、ほかのリフォームが必要な要素が出ている可能性が高いため、一緒に計画して施工することで、費用を安く抑えられる場合があります。
例えばトイレの老朽化対応と手すりの取り付けを同時におこなったり、床材を滑りにくいものに替えながら断熱工事をおこなったりすれば、助成金の活用もしやすくなります。
中古物件の購入時にバリアフリーリフォームをおこなう
移住などで中古一戸建てなどの物件を購入する場合は、入居時のリフォームを兼ねてバリアフリーリフォームをおこなうと、費用を抑えるだけではないメリットがあります。
移住先の自治体によりますが、住居のリフォームに対して助成金が支給されるケースが多くあるためです。助成金に関しては後述します。
また、中古物件の場合、最初からバリアフリー対応している物件を探すこともできるのはメリットといえるでしょう。
さらに、リフォーム済み中古物件を取得すると、フラット35では金利が優遇されます。
フラット35の融資条件で「高齢者等配慮対策等級3以上」の適合証明書、又は建設住宅性能評価書を取得した物件は金利Aプラン(優遇金利)で融資を受けられるので、興味のある方は検討してはいかがでしょうか。
参考:中古住宅のバリアフリー性(金利Aプラン)に関する技術基準の概要|フラット35
バリアフリーのリフォームはまず何をするか
バリアフリーリフォームの基礎として、まずどこをどのように改修するのかをご説明します。
手すりの設置
階段や廊下などの歩行、トイレや浴室の身体の動きを補助するために、手すりを取り付けましょう。
身体の支えが必要になってきた状態で、壁づたいに手をついて歩くのは、手が滑るなどのリスクがあるため、手すりの設置が必要となります。
段差などバランスを崩しやすい場所にも設置しておくと良いでしょう。
設置の際に、手すりの高さや太さは使用目的や取り付ける場所によって違いがあるため、設計時に専門家の意見を聞くなど注意が必要です。
段差の解消
足腰の弱い方がつまずくのを防止するためには、段差を解消する工事が有効です。
高齢の方の場合、つまずきは骨折につながるのですが、骨折が原因で筋力が低下して寝たきりに移行してしまうリスクがあるため、普段から危険箇所をチェックしてみましょう。
段差を解消するリフォームの手法は以下の通りです。
- スロープの設置
- 床のかさ上げ
- 式台などを設置して段差を小さくする
お金をかけたリフォームだけが解決法ではなく、式台や小さなスロープはホームセンターなどで市販されていますので、チェックしてみてください。
床を滑りにくくする
段差解消同様、転倒防止のために、滑りにくい床材に変更します。
床は貼り替えるだけでなく、現状の床の上にコルクやビニール床を貼る方法もあります。
リフォームは場所や現在の床材によって、適した施工方法が違うので、業者に相談しましょう。
転倒防止のために食卓は椅子とテーブル、布団よりベッドが効果的ですが、これらは同時に膝の不調が出た場合に、動作を楽にしてくれます。
照明や採光の改善
高齢による視覚機能の低下は以下のような症状が出ますが、スマートフォンの常用により、この症状の一部は低年齢化が進んでいます。
- 小さな字が見にくい
- 暗い場所と明るい場所の差が大きいと、目が慣れにくい
- 明るい場所でも暗く見え、眩しいものがより眩しく見える
これらに対応するために照明の明るさや、採光の工夫をリフォームでおこないます。
ドアの変更
ドアは出入りがしやすく、間口が広く、開閉はレバーなどが操作しやすいものに交換します。
開き戸から幅の広い引き戸に交換すると、車椅子の生活にも対応でき、動線はとても楽になるでしょう。
ドアの変更は難易度が高く、業者に依頼してリフォームとなるでしょうが、ドアを外してしまうことで対応できる場合もあります。
ちゅうこだて!の「住まいの紹介サービス」では、中古一戸建て探しのご相談を24時間チャットで受け付けております。
ぜひお気軽にご利用ください。
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箇所別のリフォーム項目
対策方法に続き、住まいの箇所別のリフォーム項目をご説明します。
リフォーム箇所別の対策概要
玄関 | ・段差の解消 ・ドア幅の拡張 ・開けやすい鍵やハンドル |
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廊下・階段 | ・手すり設置 ・段差解消 ・滑り止め ・廊下幅の拡張 |
トイレ | ・動線の簡略化 ・手すり 便座高変更 ・清掃しやすい床 |
キッチン | ・車椅子対応シンク ・人感センサー照明 ・IHヒーター |
浴室 | ・温度差対策(暖房) ・手すり ・段差解消 |
寝室 | ・介護ベッド ・リモコン照明 |
玄関
玄関はエントランスから土間、廊下と段差が多いため、解消か段差を減らす対策をします。
スロープや式台、手すり、足元照明を施工し、安全に出入りできる改修が中心となります。
車椅子対応にはドア幅の拡張が効果的ですが、引き戸にするのも良いでしょう。
その他、インターホンや電気錠などを楽に操作できるものに変更する工事もあります。
廊下・階段
転倒防止のために手すり設置、部屋間の段差解消を施工します。
階段はまず転落対策で踏み板の先端に市販の滑り止めを付けると良いでしょう。
階段の形状は一直線より、踊り場のあるL字やU字のほうがいざというときの事故でも被害が少なく理想的です。
また、移動で歩行する際に暗く狭いことが多いため、廊下幅拡張、照明の明るさなどが改善したいところです。
トイレ
1日に何度も利用するため、居間や寝室からの動線を十分に確保し、歩行しやすいように配慮します。
トイレ内での動作を補助するように手すりの取り付け、便座高の調整、洋式化をおこなう他、清掃しやすい床にしておくと安心です。
キッチン
キッチンはバリアフリー対応のための新しい設備が開発されており、椅子や車椅子で利用しやすい机状の足元スペースがあるシンク、電動昇降棚、食器洗浄乾燥機(低い位置で使えるもの)などが商品化されています。
水栓にしっかり手が届き、食器や食材を上げ下ろしするのが楽になるよう工夫がされているものです。
この他に、うっかり点けっぱなしに対応する炎が出ないIHクッキングヒーター、夜間の飲水に対応できる人感センサー付き照明などの施工があります。
浴室
浴室・脱衣所は、ヒートショックや転倒などとても事故が多い箇所です。
動作の改善対応は段差の解消、脱衣所間の引き戸ドア変更、床材変更、またぎやすい浴槽、手すりの施工などがあります。
洗面所や脱衣所は暖房設備、椅子、車椅子利用できる洗面台などを検討しましょう。
高齢で身体が利かなくなると入浴が億劫になりがちですが、心身の健康を保つために、入りやすいように配慮をしましょう。
寝室
夜間の事故やトラブルは、家族にとって心配な要素です。
まず利用しやすい環境を整えるために、布団からベッドへの変更、スイッチやコンセントの位置を座る高さにするかリモコン化、ベッドから起き上がる際の手すりなどを準備しましょう。
バリアフリーリフォームの助成金の利用方法
バリアフリーのリフォームはさまざまな助成金が準備されており、なかには複数のものを併用できる場合もあります。助成金を利用して、お得にリフォームをする方法を解説します。
※リフォームの助成金や減税制度は実施団体によって内容が異なり、予算上申し込み定員が限られることもあります。
実施機関や内容は年度ごとに変更されるため、最新の情報を確認したり問い合わせをおこなったりしましょう。
介護保険の住宅改修費制度
介護保険サービスの一環で、住宅改修費が支給されます。一人あたり最大18万円で、一括でなく限度額まで、細かく何回にも分けて利用可能です。
また、転居や要介護区分が3段階重くなったなどのケースで、再度18万円の利用枠が復活します。
ただし支給対象となる工事の種類が決まっていることと、要介護認定が支給要件となるため、「バリアフリーが必要になる前に早めに利用する」ということができません。
市区町村の助成金制度
介護保険とは別に、各市区町村が独自におこなうバリアフリー住宅改修費の助成制度があります。
実施内容や介護保険との併用の可否は自治体によって異なるため、注意しましょう。
市町村の助成金も、条件的におおむねすでにバリアフリーの状況が必要な方を対象にしていることが多いです。
この他、介護目的のリフォームをした場合は、税金の控除も受けられる可能性があります。
バリアフリー目的のリフォームで、工事費用相当額から補助金額を除いた金額が50万円を超える場合、改修後1年間の所得税から工事費用などの10%が控除されます。
工事費用相当額は、工事内容に応じて定められていますので、以下でチェックしてみましょう。
※この特例は2023年末までの時限ですので、翌年以降の実施は延長の情報をご確認ください。
参考:所得税(リフォーム促進税制(旧投資型))の特例措置について|国土交通省
移住の際のリフォーム助成金制度
UターンやIターン移住の方を対象に各自治体が設けている中古一戸建てなどのリフォーム助成金制度は、使途自由なものが多く、利用しやすくなっています。
例えば鳥取県岩美町の例では、空き家活用情報システムを利用し、一定の要件を満たす移住者はリフォーム費用の2分の1が助成されます。(2023年現在実施中。上限金額:県外からの移住者 200万円、県内からの移住者 100万円)
バリアフリーリフォームの注意点
バリアフリーリフォームに失敗しないためにはどのような点に注意すればいいのでしょうか。
施工後に起きた問題や、業者への依頼に起きやすい失敗例をご覧ください。
施工の注意点
バリアフリー施工にあたって、事前にある程度の知識や、依頼したいことをまとめ、業者との打ち合わせをしっかりおこなうことで、トラブル回避につながります。
うまく機能を発揮しなかった
例えば手すりの付け方などによっては、トイレや廊下が狭く感じられたり、必要な高さに合っていなかったりすることが起こります。
バリアフリーのリフォームで多い失敗は、以下のようなものがあります。
- スロープの幅が足りなかった
- 手すりの位置が理想と違った
- 無駄な手すりを付けた
- 段差の対策が足りなかった
将来に備えて早めに車椅子用のスロープを付けると、スロープの幅が狭く後悔するケースがあり、これは将来にどのような車椅子が必要になるのか未確定なためです。
車椅子にもリクライニングや電動タイプなど、身体の機能に合わせていくつかの種類があります。
自力で歩ける状況でスロープを作ると、車椅子を使い始めてから幅や勾配の問題に気付き、手直しが生じる可能性があります。
同様に、まだ手すりがいらないうちに手すりを設置すると、本当に必要な位置とは違う位置に設置してしまうこともあるでしょう。
例えば、廊下の左側に手すりを付けたあと、左脚に障害が出て、右側に手すりが必要になるなどです。
また、手すりが使いやすい位置になっていないため、位置の調整が必要になることもあります。
手すりの数も、必要になりそうな部分に多く手すりを付けてしまうと、かえって廊下幅などを狭くしてしまうことがあります。
例えば、お風呂の壁に付けた手すりが、入浴の介助をするときに邪魔になるかもしれません。
コストの無駄だけでなく、家の機能に障害が出てしまいます。
段差解消のリフォームのあとに、小さな段差がそのままになっていることもあるでしょう。
加齢により筋力が低下すると、今までなんともなかった障害物につまずいて転倒するケースが増えます。
生活の他の点に支障が出ないか、正しく機能を発揮する施工なのか、事前に確認や専門家へ相談しましょう。
費用が高額になりやすい
住宅リフォーム推進協議会の2020年度のデータでは、実施者のリフォーム予算は平均279万円で、実際にかかった費用は平均356万円と、平均して想定よりも27%ほど高額になったというデータがあります。
あとで必要なかったと気付く改修もあるので、使用目的をしっかり検討することと、市販品で間に合うかなどの確認もおこないましょう。
例えば浴室などは、浴用椅子や浴槽用の手すり、浴槽内の椅子などを、介護保険を利用して購入する方法もあります。
業者依頼の注意点
リフォームの仕様を確定したら、見積もりの際に仕様書と見積書、契約書の3つをしっかり確認しましょう。
具体的には以下の確認が必要です。
追加費用の発生を防ぐ
依頼内容が総額の範囲ではなく、追加作業だった場合があり、その場合金額は上乗せになります。
見積もりの時点の作業範囲確認と、追加の際の金額確認をしましょう。
細かい部分を希望通りにする
手すりやコンセント、照明の位置などは施工者が経験で判断し、独断で進めてしまうケースもあります。
事前打ち合わせの際に、気になる点はしっかり相談や質問をしましょう。
近隣からのクレーム対策が必要
リフォーム工事の際は音や振動、匂いなどへの配慮や対策も、依頼内容のうちです。
事前の挨拶やスケジュール共有などをしてもらえるかどうか確認をします。
また、施主自身もご近所にご挨拶しておけば安心です。
築年数の古い物件の注意点
築年数を経た未改修の物件は、以下の箇所がウイークポイントとなっている場合が多いので、チェックしてみましょう。
- 玄関土間と居室の高低差が大きい点を解消する。
- 室内が暗い箇所は採光や照明を工夫する。
- 室内の温度差を解消できるよう、窓や床の断熱も見直す。
- 廊下の滑りやすさ対策をする。
まとめ
日常の事故を予防し、介護が必要になっても家族全員が安心、快適に暮らせるバリアフリー化の内容や、リフォームの進め方を解説しました。
バリアフリーのリフォームは早い段階で計画し、他のリフォームと一緒におこなうのが理想ですが、その時点では何が本当に必要かがわかりにくいので、公的な相談窓口も利用して知識を増やしましょう。
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