再建築不可物件のリスクとは?購入のメリットや方法をご紹介

再建築不可物件のリスクとは?購入のメリットや方法をご紹介

相場に対して価格の安い物件の詳細を見ると、「再建築不可物件」と書かれていることがあります。再建築ができないから価格が安いというのは理解できますが、建て替えられない物件を買う方はいるのでしょうか。

この記事では、再建築不可物件のリスクや購入のメリット、注意点や購入方法をご紹介します。再建築を可能にする方法や、リフォームの依頼方法もご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

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再建築不可物件とは?

再建築不可物件とは?

再建築不可物件は、建物の建て替えができずリフォームにも制限があります。その理由は建築基準法などの法令改正によって、以前は建てられた条件が現在では建築不可となっているためです。

これを既存不適格といい、法令改正以前の建物に関しては、改修や取り壊しなどの義務は発生しないため、建て替えしなければ継続して利用が可能です。既存不適格のほか、高圧送電線の下、接道義務、市街化調整区域内など、現在の法規に合わなくなった物件が、再建築不可となります。

それでは、再建築不可の物件を詳しくご紹介しましょう。

法改正で接道義務を満たさなくなった土地

1950年制定の建築基準法で接道義務という、幅員4m以上の道路に2m以上接している土地でなくては建築できないルールができ、条件に合わない場合は再建築が不可とされました。道幅4mを確保する理由は、消防車の立ち入りなど火災の際の消火活動に支障がないようにするためです。

狭い道にしか面していない宅地を改善していく手段として、敷地を提供して道路の幅を拡げるセットバックという手法がとられます。しかし、敷地面積や近隣地との関係でセットバックが困難な再建築不可物件も存在するので、確認しましょう。

敷地上空に高圧線が通っている土地

敷地の上空に17万ボルト以上の高圧線が通っている場合、あるいは17万ボルト未満でも電力会社との契約により建築が制限された土地の場合は、建物の再建築はできません。

街づくり計画による再建築不可

再建築不可物件は1筆の土地だけでなく、あるエリア全体に規制がかかることもあります。例えば伝統的な建物が多く残された場所を、自治体で策定した街づくり計画で建て替えなどを制限するなどです。このようなケースでは、最終的には物件の資産価値が上がっていくことも考えられるでしょう。

このほかにも何らかの理由で建築当時の法律と現在の建築基準法に違いが出て、新たに建物が建てられない場合が、再建築不可物件となります。

再建築不可物件を売買する場合、物件情報でその旨を告知しなければならない義務があります。

違法建築との違い

違法建築は法改正の時期以降に建てられたもので、法改正以前の、居住権などを保護される建築物とは区別されます。違法建築には、行政によって使用禁止や建物の移転・除却などの指導が入ることがあり、工事中の物件は工事停止の指導もありうるでしょう。

違法建築の行政指導は、2017年には全国で約2,000件にのぼっていました。以下は違法建築の例です。(あとからの施工で是正可能なものも含む)

建ぺい率オーバー 敷地面積に対する建築面積の割合が、そのエリアで定められた基準を超えている。建築面積は1階部分の面積に軒・ひさし・出窓など突出部が1mを超える部分の面積を加えたもの。
採光不良 定められた居室面積の1/7以上、採光のために有効な開口部(窓)の設置を満たしていない。隣地の建物との間隔の狭さで多く発生する。

窓は改修が難しく、実質的に是正不可能。

違法増築 10㎡を超える面積の増築で、建築確認申請をおこなっていない。是正工事は増築部分の除去となる。

違法増築のほとんどは検査済証が未取得で、確認申請もおこなえない状態。

放置すれば行政から取り壊しの命令が出たり、強制的に取り壊され、費用を請求されたりすることも。

界壁の基準違反 アパートなどに多い、隣室との間に設ける壁の施工不良。界壁は防火性能・防音性能を担うため、本来は屋根裏・小屋裏まで界壁が達していることが必要。

ただし2019年の建築基準法改正で界壁の要件が緩和されているため、是正工事が不要になっているケースも。

天井高や面積違反のロフト 以下の基準を守っていないロフト。

・ロフトの床面積がその階の面積の1/2未満
・ロフトの天井高の最も高い部分が1.4m以下

本来これらの規定を満たさない場合は一つの階とみなされ、違法建築となる。

市街化調整区域の再建築不可とは

市街化調整区域の再建築不可とは

地方や郊外への移住を検討する方の場合、市街化調整区域内での再建築不可物件には要注意です。市街化調整区域は都市計画上、市街化の優先順位の関係で、建物の建築を抑制する地域なので、原則として建物の再建築はできません。

再建築しない前提で取得する選択肢もありますが、なかには法律を知らずに所有権移転前に古い建物を壊して、建て替えられなくなるケースもあります。どのようなケースで再建築可能かをご説明します。

条件付きで再建築が可能

市街化調整区域の中古物件は、以下の条件下で建て替えが可能となっているため、あらかじめ条件に合った物件を探す必要があります。もしくは、リフォームのみで住み続けられるような物件を選ぶのも良いでしょう。

地域に需要があり貢献できる建物の再建築

まず住居とともに学校、店舗、お寺など以下の施設を営む場合は、都道府県知事の許可を要しますが、地域への貢献度が考慮されるため市街化調整区域での再建築が可能になることがあります。

移住先で以下のような業種の起業をお考えの方はチェックしてみましょう。

再建築が認められる業種 店舗・学校・理美容院・ホテル・遊園地・ゴルフ場・図書館・公民館・変電所・鉄道施設・仮設建築物・寺・墓・ゴルフ練習場・老人ホームなど

もとの所有者の親族が自分で住む場合の再建築

土地の所有者、およびその親族が住む住宅の場合、市街化調整区域でも建築やリフォームが可能となります。ただし、可能なのは都市計画法関連の都道府県条例がある自治体のみで、親族が住む場合は基本的には6親等以内の方であることが条件です。

親族やエリアは3親等の場合や、隣接自治体に親族が居住している場合でも良いなど、ケースバイケースのため規定を確認してみましょう。

区域指定前の既存宅地での建て替え

市街化調整区域に指定される前から建っていた既存宅地は、住宅の建て替えがしやすくなっており、ローンの利用も可能です。

ただし、以下の要件は外せません。

既存宅地の建て替えの要件 ・市街化調整区域指定以前からの宅地であること
・建て替え後も同じ用途(住宅)であること
・建て替え後も同じ敷地にあり、同じ規模の建物であること

また、既存宅地であっても市街化調整区域に指定されたあとに建て替えをする場合は再建築の許可が必要です。その場合、都道府県知事による開発許可が必要となる点に注意しましょう。

ちゅうこだて!の「住まいの紹介サービス」では、中古一戸建て探しのご相談を24時間チャットで受け付けております。
ぜひお気軽にご利用ください。

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再建築不可物件を購入するメリット

再建築不可物件を購入するメリット

再建築不可物件を購入するうえでは、価格をはじめ以下のようなメリットがあります。

  • 低価格で購入できる
  • 立地の良い物件も多い
  • かかる税金が抑えられる

低価格で購入できる

再建築不可物件の多くは、再建築できないことを理由に相場よりも低価格で販売されています。立地などによって異なりますが、通常の1~5割程度で購入できることもあります。安く購入できれば、その分リフォームなどに予算を割くことができるのも大きな魅力でしょう。

立地の良い物件も多い

接道義務を果たさないような再建築不可物件は、古くからの市街地の住宅が密集したエリアに多く、立地に優れている場合も多くあります。

後悔しない物件選びさえできれば、安価で好立地の住まいを入手でき、生活の利便性でとても有利になるといえるでしょう。

かかる税金が抑えられる

資産としての評価が低めな再建築不可物件の購入は、購入時や毎年納める税金について、具体的に以下の面で節税となるでしょう。

固定資産税が安い

まず再建築不可物件は固定資産税評価額が低いことから、固定資産税や都市計画税額が抑えられます。そのため、固定資産税評価額をベースに計算する購入時の不動産取得税も、同エリア・同等の物件に比べて安くなるのが魅力でしょう。

相続税評価が低め

再建築不可物件を相続する際にも、評価額を抑えられます。

相続税の評価額は以下の表のように求められますが、固定資産税評価をベースにするか、再建築不可の補正がかかります。そのため通常の物件に比べて相続税評価も下がり、基礎控除を含めると非課税となる確率が高いです。

相続税の評価方法

土地評価額の計算方法 路線価方式 路線価×土地面積※再建築不可物件の場合は、その土地に応じた補正をした価格から、40%の範囲内において相当とされる金額を控除した額
倍率方式 固定資産税評価額×指定倍率※都市部以外など、路線価が発表されないエリアで用いる。
建物評価額の計算方法 固定資産税評価額と同額

再建築不可物件を購入するデメリット

再建築不可物件を購入するデメリット

再建築不可物件を購入するうえでは、建て替えできない点をはじめ、以下の点もデメリットとなりえます。

  • 建て替えできるか
  • どこまでリフォームできるか
  • 住宅ローンが組めるか
  • 災害時に復旧できるか
  • 売るときの問題

建て替えができない

文字通り、新しく建て替えすることは原則的にできません。後述の方法や市街化区域の例外はありますが、現状で再建築ができない場合、必ず建て替えできるようになる保証はありません。

したがって、今ある建物の不具合を修繕し、リフォームして使用するのが前提になります。

建築申請が必要な改築やリフォームができない

再建築不可物件は、部屋数を増やすなどの規模の増改築はできません。施工の認められるリフォームも、再建築不可のために年数が経過した建物の老朽化が進んでいて、費用が多くかかるケースに注意が必要でしょう。

再建築不可物件がリフォームできる範囲は「建築確認検査が不要な工事のみ」となっています。建築確認検査は、設計や敷地の使い方が建築基準法などに適合しているかを確認することにあるため、再建築不可の土地ではそもそも申請が出せません。

したがってリフォームをする場合は、以下のような建築確認申請が必要ない範囲で計画を立てる必要があります。

  • 水回りの入れ替え
  • 壁や床の張り替え
  • 10㎡以内の増築
  • 主要構造部(基礎や土台、柱、壁、屋根、階段など)の1/2未満の修繕

さらに2025年の建築基準法改正で、2階建て以下かつ200㎡以下の建物でも、大規模な修繕や大規模な模様替えには建築確認申請が必要となることが予定されています。

このルールでは、建築確認申請対象外の建物での大規模な改修工事はさらに難しいことになりますが、都心の立地の良い物件や、空き家の活用には逆行する方向性となるため、今後の情報には注意が必要です。

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住宅ローンが組めない

再建築不可物件も都心部の立地の良い物件ではそれなりの金額で取引され、リフォームも予算が必要なので、融資を受けたいとなるでしょう。

しかし再建築不可物件は売却しても安くなることから担保価値が低く、住宅ローンを利用できないか、借りられても融資の金額が低くなることが一般的です。

そこで、以下のような方法を検討しましょう。

借入の方法

銀行系でも、フリーローンを住宅資金に充てることはできますし、リフォームローンも利用できます。ただしどちらも3%台と、住宅ローンに比べとても高金利となるほか、住宅購入とリフォームを合算した融資を受けることは難しいでしょう。

リフォームローン単独の場合も、注意が必要です。再建築不可物件は、現在の建築基準法よりも前に建てられていることが多く、築40~50年以上の建物が多いです。

このような建物をリフォームする場合は改修箇所が多いため、費用は高額になりがちですが、将来建て直しができない物件の担保価値が影響する点は、住宅ローンと同じでしょう。

金利を含めた総額を確認のうえ、繰り上げ返済のめどや、返済期間の取り方には十分な検討が必要です。

災害などで倒壊・損失しても再建築できない

災害による建物の倒壊や、火災による焼失など、予期しない事態で家屋を失っても、やはり再建築はできません。

火災、地震など住まいの保険に入る際ですが、再建築不可を理由に査定が下がることはなく、単純に築年数や面積で掛け金の幅を算出して、加入することができます。

退去する際に物件の売却が難しい

再建築不可物件は安くは購入できるものの、前述の借入が難しいなどの理由で、買いたい方が少ないのが実情です。また、売れても買ったとき同様に売却額は安くなるでしょう。

投資家の方にとっても、立地が良くても修繕の経費がかかったり、利益を出すのに時間がかかったりと運用が難しいため、敬遠の要素となります。

もし売却したくなった際は、不動産会社を通じて再建築可能な土地で利用できる可能性のある、隣接した土地の所有者に購入を打診しましょう。

再建築不可物件をリフォームする方法

再建築不可物件をリフォームする方法

再建築不可物件はリフォームする前提での購入が多くなります。リフォームの方法や注意点を解説します。

リフォームの制約に注意

前述のように、再建築不可物件では建築確認申請が必要になるスケルトンリフォームレベルの改修はおこなえません。

また、土地面積や建ぺい率の関係で、10㎡以上の増改築はできないことが多いでしょう。東京都の場合は防火地域、あるいは準防火地域に指定されており、10㎡未満の増築でも確認申請が必要となることが多く、その場合増築不可に該当します。

柱や梁など建物の構造を変えず、増築とならない範囲内であればリフォームは可能ですし、この規定内であれば、新築に限りなく近い状態とすることも可能でしょう。しかし、前述の2025年の建築基準法改正で、建築確認申請の対象物件が増える問題があり、今後駆け込みのリフォーム需要が生じることも考えられます。

リフォーム業者選びの方法

リフォームを依頼する業者選びの基準は、費用面の比較以外に以下のポイントを参考にして、複数社に相見積もりを依頼しましょう。

リフォーム業者選びのポイント

希望のリフォームと同様の工事実績があるか ・業者の得意分野や特徴が、希望するリフォームに近いか
・近いタイプの施工実績があるか
要望に合わせた提案をしてもらえるか ・業者の都合で意見を押し付けないか
・プロの立場でこちらの意図をくんでくれるか
・予算別の提案が得られるか
・再建築不可物件の法的な対応に通じているかは重要
質問に対する回答が早く的確か ・質問の意図を理解してくれるか
・反応が早いか
・説明は専門用語を使わずわかりやすいか
担当者との相性 ・親しみや信頼感を得られるか
・意見を言いやすい相手か
自宅からの距離 ・相談しやすく、今後も付き合いやすい距離にあるか
保証・アフターサービスの内容 ・作業中の物損事故やアフターケアへの対応がしてもらえるか
・施工したきりでなく、フォローが得られるか
団体の加盟やスタッフの資格 ・リフォーム協会・リフォーム瑕疵(かし)保険の加入事業者か
・倒産時の保険は大丈夫か
・第二種電気工事士・塗装技能士・左官技能士・有機溶剤作業主任者などの資格保有者がいれば安心
口コミなどを参考にする ・Web上での口コミの内容が良いか(投稿数が少ない場合は、内容を鵜呑みにしない

また、リフォームを請け負う業者は下記の表のように、業態ごとに特徴が異なるため、その違いも知っておきましょう。

リフォーム業者の分類

リフォーム専門会社 ・大手のほかに、地元密着型の小規模・中規模な企業も多い

・提案内容が豊富で、地域密着型の場合はメンテナンスなども継続して依頼しやすい

ハウスメーカー系業者 ・リフォームやリノベーション、増改築、耐震工事、断熱リフォームなどの大規模な工事も扱え、資材供給も豊富

・小規模の工事は依頼できない場合がある

設計事務所や建築家 ・耐震、断熱工事やバリアフリーなどに詳しい業者も多い

・暮らしのニーズを重視し、デザイン性、オリジナル性にこだわる場合に適している。設計料が別途かかることも

工務店 ・地域密着で風土に合わせた施工に詳しい。メンテナンスも頼みやすい

・下請けで施工する場合もある

家電量販店・ホームセンター ・大手メーカーの既製品を中心に施工する

・シンプルにここだけという改修で、金額を抑えやすい点がメリット

・下請け施工が多いため、依頼者と職人とのコミュニケーションが大事

インフラ系・職人系 ・水道・電気・ガスを供給している会社の系列店でリフォーム事業をおこなっている

・屋根・外壁・内装・ドア・窓などの工事に特化した職人が経営する業者も多数ある

・専門分野の施工知識や資材調達に強い

住宅設備メーカー系 ・LIXILやTOTOなどの住宅設備メーカーは、自社製品を取り扱う工事店とのネットワークでリフォームを受注している

・商品・メーカーによってグレードや価格帯が異なるため、ニーズに合わせて選ぶ。ほかのメーカーからは選べない

リフォームの進め方

リフォームの進め方の流れは、以下を参考にしてください。

  • 要望まとめ
  • 予算計画
  • 依頼先選び
  • 契約と現場確認
1.要望まとめ ・リフォームでやりたいことを家族で話し合い、優先順位と予算のめどをつけておく
・業者の参考にしてもらえる写真や動画を準備しておくと良い
2.予算計画 ・話し合い結果や新築時の図面、建築に関する資料をもとに、業者への初期的な問い合わせで予算感を把握する
3.依頼先選び ・前項の基準をもとに、相見積もりで依頼先の業者を選ぶ
・ハウスメーカー、工務店、リフォーム専門業者など業態ごとの特徴も知り、合う業者を探す
4.契約と現場確認 ・契約書、設計図書、仕様書、見積内訳書などをもとに、不明点はしっかり確認する
・施工開始後も現場に行き、作業確認をおこなうと良い

再建築を可能にする方法

再建築を可能にする方法

現行の法規の基準を満たすなどすることで、再建築できるようになる場合があります。この項では、再建築不可の物件を建築可能にする方法をご紹介します。ただしどの手段も、必ず実行できる保証がない点は留意しておきましょう。

セットバックする

セットバックとは、自分の土地を道路として提供し、「接道義務」を果たすことです。建築基準法上の道路は4m必要で、その道路に敷地が2m接していることが求められます。つまりこの「4mに2m」を達成できれば、土地は再建築が可能になります。

例えば道幅が3.6mの場合は、40cm分の道路拡幅をしますが、道路の中心線から2mになるようセットバックするため、40cmの拡張分のうち、20cmの土地を提供すれば問題ありません。

セットバックで再建築が可能になる道路であることを確認できたら「事前協議書」を役所へ提出します。提出後、自治体職員の現地測量・協議図面の確認、セットバックの工事へと進む流れとなります。測量や工事の一連の費用は自己負担となる部分もあるので、事前の確認は必須です。

セットバックが完了したら、セットバックした部分を固定資産税や都市計画税などの税金の対象外とするために、自治体への申請を忘れずにおこないましょう。

隣の土地を買い足す

土地が接道義務を果たすように、隣接した土地を買い足すのも一つの方法として挙げられます。隣接地の購入・交換が難しい場合は、借りるという方法でもOKです。通行する権利があれば接道義務を満たせるためです。

例えば現状の接道の間口が1.8mであれば、0.2m分の隣の土地を借りることで、再建築ができるようになります。

土地を借りる際は「土地賃貸借契約書」を作成します。記載内容は以下です。

  • 借主・貸主の名前および住所
  • 取引の対象になる土地の詳細(所在地や面積など)
  • 借り手が支払う金額
  • 賃貸借の期間 など

この種の賃貸借は当事者間のみでも契約可能ですが、契約の効力やトラブルの可能性など、詳しくは不動産会社に相談したほうが安心でしょう。

土地の等価交換をする

隣地とお互いの土地を融通して交換し、接道義務を果たせるようにできる場合があります。例えば、土地から道路まで通路の延びた旗竿地(敷地延長)の場合は、旗の部分の一部を隣地に提供し、竿の部分を譲ってもらうケースが一般的です。

このような土地同士の交換は「固定資産の交換の特例」を受けられ、譲渡に関係する所得税は課税されません。

位置指定道路の申請をする

位置指定道路の申請とは、私道の位置指定申請をおこなうことで建築基準法の道路として認定を受け、再建築ができるようにする方法です。

建築基準法の道路に該当するのかは、エリア内の役所(建築指導をおこなう部署)で確認のうえ、申請をおこないます。申請の代理が認められている場合は、建築士もしくは行政書士に書類作成と提出の依頼も可能です。

43条但し書きの許可を取得する

接道義務を満たさない物件でも、建築審査会の許可を受けて再建築が認められることがあるケースを、建築基準法・接道義務のなかの「43条但し書き」と呼びます。

土地に以下のような条件が整っていることが前提となる点にご注意ください。

  • 周囲に公園・緑地・広場などの広い空き地がある
  • 農道などに接している
  • 道路に通じて避難時に安全に利用できる通路に接している

上記の条件からわかるとおり、建築基準法の接道義務を満たしていない場合でも、以下のように、街の安全性が担保できると判断された場合に許可が下りるという考え方です。

  • 緊急車両の乗り入れの道幅が確保できる
  • エリア住民が安全に避難できる
  • 周辺の家屋から延焼が起きにくいレベルでの距離がある

ただし、どのレベルでクリアできるのかは、エリアの状況と自治体の建築審査会の考え方次第なうえ、この但し書きの場合は、将来建築のたびに建築審査会の許可申請をしなければなりません。

再建築不可物件の購入に向く方

再建築不可物件の購入に向く方

ここまでの諸条件から、再建築不可物件の購入に向く方を整理しましょう。

中古一戸建てをリフォームして住みたい方

建物の構造を変えず、増築とならない範囲内であれば、現状ではスケルトンレベルの大規模リフォームも可能な場合があります。趣味的なDIYで、資金を抑えてリフォームを進めたい方にも「向いている」といえるでしょう。

地方で安い物件を探す方

地方や郊外の市街化調整区域で、再建築が困難な中古物件なら、立地が良く価格も安い物件を探すことができます。

立地が良ければ、将来的に隣接する土地の所有者と話がまとまって、再建築可能な土地を目的とした買い増しや売却が成立する可能性もないとは言い切れません。

市街化調整区域の場合は固定資産税が安く、再建築可能な既存宅地もありますので、チェックしてみましょう。

居住以外の目的に利用する方

住まいとして利用しようと取得したものの、何らかの理由で方針変更をする場合、以下のように居住以外の目的で使用することで、有効に活用できる場合もあります。

一戸建ての賃貸 購入した一戸建ての物件を賃貸に出す。住居に貸し出すためには相応のリフォームは必要になる。
店舗テナントの賃貸 商圏として立地が良く、用途制限や建物の構造に問題がない場合はテナントとして貸し出す。保証金や返還条件を定めたうえで、ある程度自由な内装変更などを認めたほうが借り手が付きやすい。
トランクルーム経営 レンタルスペースとして貸し出す。すぐにでも開始可能。防犯管理などができれば借り手が付きやすい。
ガレージハウス経営 車庫や倉庫が付属する物件の場合、普通の賃貸借よりも趣味性の強いアピールが可能。
駐車場・駐輪場の経営 更地にすることが必要。月極めは簡単だが時間貸しの場合課金設備が必要となる。
貸農園の賃貸 更地にすることが必要。1区画の広さは1~4坪程度と小規模で。課金相場はさまざま。
家庭菜園 自己使用で庭を菜園に。建物は残す選択もあり。
自動販売機スペース 立地が良ければ路面や庭に自動販売機を設置する。ごみ対策や治安への配慮は必要。
ソーラーパネル設置 更地にするか、今ある建物の屋根や庭に設置することも可能
資材置き場 都心部でもニーズあり。更地にすることが必要。
ドッグラン経営 都心部でもニーズあり。更地にすることが必要。
売却 放置空き家にして資産価値を下げたり、自治体から特定空き家指定を受けたりする前に売却する。

上記の用途のうちいくつかは更地にして利用する前提です。更地にすると建て替えができなくなるほか、住宅用地の特例がなくなり、固定資産税が6倍の金額となります。建物を壊す際にはよく検討のうえでおこなってください。

再建築不可物件を更地として活用する場合は、初期投資額と固定資産税などの出費に対して見合う利益や利点が見込めるのか、事前にシミュレーションをしましょう。さらに、更地にしてからの利用手段としてコンテナハウスやトレーラーハウスを設置し、上記のような多様な目的に利用もできます。

コンテナハウスとは車両や鉄道、船などで荷物運搬の際に使われる容器を建物に転用したものです。コンテナハウスを設置すれば、物置や貸事務所、店舗などに活用でき、基礎の構造などを工夫すれば、建築確認が不要です。

ただし、以下の3つの条件は満たす必要があり、都市部ではハードルが高い面もあります。

  • 床面積が10㎡以下であること
  • 防火地域・準防火地域に該当しないこと
  • 新築以外(増築・改築・移転)であること

トレーラーハウスの利用は、自動車にけん引される貨車を建物に転用するものです。自由に移動ができるため、法律上は車両とみなされて、建築確認申請なしで設置が可能です。

コンテナハウスと同様に、物置や貸事務所、店舗などに活用できます。

ただし、サイズは車幅が2.5m以下、全長12m以下、高さ3.8m以下と定められており、一般的な建築物と比較してスペースの制約が出ます。

また、車両として扱ってもらうためには以下の要件を満たす必要があります。

  • 随時かつ任意に移動できる状態で設置すること
  • 土地側のライフラインの接続方法が工具を使用しないで着脱できること
  • 適法に公道を移動できる自動車であること

再建築不可物件を購入する際のポイント

再建築不可物件を購入する際のポイント

再建築不可物件を購入する際に、のちに後悔しないために留意すべき点をまとめると、以下の点です。

  • 建物の状態を確認する
  • 再建築不可の理由を知っておく
  • 隣地との境界線を明確にする
  • インスペクションをおこなう

以下に詳しくご説明します。

建物の状態を確認する

購入にあたっては、リフォームの難易度とその予算感が大きなポイントとなります。

購入後に簡単には直せない問題点が見つかっても、すぐに売るか居住以外の目的に利用する以外にありません。しかし、すぐに売る場合は短期譲渡扱いで高額の譲渡所得税がかかり、経済的な負担となるでしょう。

建物の基礎や柱、屋根、壁などに激しい損傷がないかは、しっかり確認することが必要です。
後述のインスペクションを依頼することをおすすめします。

再建築不可の理由を知っておく

購入するにあたってなぜ再建築不可なのか、どうなれば建て替えできるようになるかは、詳細を把握しましょう。

また、2025年におこなわれる建築基準法の改正内容も確認しておく必要があります。将来にわたる資産価値の把握のため、これらの情報は確認しておきましょう。

また、大原則として住居以外の使いみちが明確になるまで絶対に更地にしないことをおすすめします。

隣地との境界線を明確にする

築年数が古い物件は、隣地との境界があいまいなケースが多く、将来にわたるトラブルや、再建築を目指す際の障壁になります。入居後のトラブルやリスク回避のため、購入前に境界線を明確にしておくと良いですが、まずは未確定な部分があるかを把握しましょう。

公簿上の境界と実際の境界にずれがあり、確定測量をおこなうことで、セットバックや等価交換が容易になることも考えられます。境界測量、境界確定はそれぞれ、35~80万円ほどの費用がかかるため、購入を検討する際はその点も念頭に置きましょう。

インスペクションをおこなう

購入決定前にインスペクションをおこなうことで、どの程度のリフォームが必要か、建物の耐用年数の概算など、購入の意思決定に重要な情報を得られます。

また、インスペクション以降に、インスペクションでも見つけられなかった不具合が出た場合でも、住宅瑕疵(かし)保険に加入していれば補償を受けられます。

インスペクションとは

インスペクションは、住宅の売買契約前に専門家によっておこなう物件の検査です。住宅の劣化や欠陥を調べ、修理が必要な時期やかかる費用のアドバイスも受けられます。

インスペクションは売り主と買い主、どちらからも実施を依頼でき、基本料金の相場で5~8万円程度、機械を用いた検査や耐震審査をおこなう場合はオプションとして追加料金がかかり、10万円台となる場合もあります。

住宅瑕疵保険の加入目的だけの検査もできますが、インスペクションとの違いを確認してみましょう。

項目 瑕疵保険の検査 インスペクション
検査目的 瑕疵保険に加入するための物件調査 物件の不具合や劣化の調査
検査範囲 保険の対象部位(保険の法人によって異なる) 小屋裏や床下の点検口からの目視のほか、オプションで詳細診断や耐震検査など(詳しくは後述)

保険用の検査は加入可能かが目的なため、建物に長く住めるかを検査したい場合は、瑕疵保険の検査だけでは不十分といえるでしょう。

対して、インスペクションの検査内容は以下の表のとおりです。

(1)構造耐力上の安全性に問題がある可能性が高いもの
対象部位など 検査対象とする劣化事象など 検査方法
小屋組、柱・梁、床、土台・床組などの構造耐力上主要な部分 ・構造方式ごとに、木造の蟻害・腐朽が、鉄構造の腐食が、鉄筋コンクリート造の基礎の検査対象とする劣化事象などが生じている
・著しい欠損や接合不良などが生じている
目視、触診、打診、計測
床、壁、柱 ・6/1,000以上の傾斜が生じている(鉄筋コンクリート造その他、これに類する構造を除く) 計測
基礎 ・コンクリートに幅0.5mm以上のひび割れ又は、深さ20mm以上の欠損が生じている
・鉄筋コンクリート造で鉄筋が腐食している可能性が高い状態(錆汁の発生)や、腐食する可能性が高い状態(鉄筋の露出)
目視、計測
(2)雨漏り・水漏れが発生している、又は発生する可能性が高いもの
対象部位など 検査対象とする劣化事象など 検査方法
外部(屋根、外壁) ・屋根葺き材や外壁材に雨漏りが生じる可能性が高い欠損やずれが生じている
・シーリング材や防水層に雨漏りが生じる可能性のある破断・欠損が生じている
目視
外部(屋外に面したサッシなど) ・建具や建具まわりに雨漏りが生じる可能性が高い隙間や破損が生じている
・シーリング材や防水層に雨漏りが生じる可能性が高い破断・欠損が生じている
目視
内部(小屋組、天井、内壁) ・雨漏り又は水漏れが生じている(雨漏り・漏水跡) 目視
(3)設備配管に日常生活上支障のある劣化などが生じているもの
対象部位など 検査対象とする劣化事象など 検査方法
給排水(給水管、給湯管) ・給水管の発錆による赤水が生じている
・水漏れが生じている
目視、触診(通水)
給排水(排水管) ・排水管の詰まり(排水の滞留を確認)
・水漏れが生じている
目視、触診(通水)
換気(換気ダクト) ・換気ダクトの脱落、又は接続不良による換気不良 目視

出典:既存住宅インスペクション・ガイドライン|国土交通省

まとめ

まとめ

再建築不可物件のリスクや購入のメリット、注意点や購入方法をご紹介しました。再建築不可物件はメリットもある反面、物件の事前のリサーチが後悔しないためのポイントとなるため、不動産会社やリフォーム業者などの専門的なサポートが不可欠です。

中古一戸建て所有者の方の高齢化にともない、再建築不可物件の流通は今後さらに増えると考えられます。立地やコストに恵まれた物件をうまく利用しましょう。

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